ラビリンスワールド 第4章 (その4)  L404

 夜寝る前にスマホを確認したら、明日の待ち合わせ場所と時間が入っていた。次の日、ユウカから指定された時間に指定された素材工房に向かった。素材工房にはすでにユウカが到着していて、仲間にいろいろ指示をしていた。ユウカは俺をみるなり、

「おお、来たな。お前には石を拾ってきてもらいたい」

「石ですか。どんな石を拾ってくればいいんですか?」

「こんな石だ」といってスマホで石の写真を俺にみせた。その石は黒っぽい石で細かい白い点が入っていた。

「これはクロムの鉱石だ。拾ってくる場所はこの前の道を西に進んで、裏山に着いたら裏山を登ってさらに西に進むと小さな物置小屋がある。小屋にたどり着いたらそこから北に少し進んだところにクロム鉱石がたくさん落ちているはずだ」

「わかりました。どのくらい必要ですか」

「5kgは欲しいな」

「多いですね」

「このくらいないと商売にならないんだよ。そのための男手じゃないか。昼までに集めてくれ。それじゃあよろしくな」

 人使いが荒いなと文句をいいながらクロム鉱石を拾いに出かけた。素材工房を出て西に向かった。歩いているとガーデニングコーナーの横を通り過ぎた。ガーデニングコーナーには数名の女性がいて各々花やハーブを育てているようだった。しかし、どの女性も険しい顔をして、一生懸命大量の花やハーブの世話をしていた。ガーデニングコーナーを過ぎると西の裏山に着いた。西の裏山は勾配が急なのでかなり苦労して平らなところまで登った。平らなところまで来ると簡単に歩くことができた。さらに西に向かった。しばらく歩くと、物置小屋があったので物置小屋を北に進んだ。この辺だと思い、黒い石を探した。しばらく歩くと小さな黒い石を見つけた。あったぞ。この辺に違いないと思いあたりを探してみた。ユウカがたくさんあると言っていただけのことはあり、クロム鉱石は比較的簡単に集めることができた。1kgほど集めたところで持ちきれなくなったので、入れるものを取りに素材工房へ戻った。

「1kgほど持ってきました。また取りに行きますので、袋ください」

「袋なんて何に使うんだ」

「ですから、拾った石を運ぶんです」

「お前、何にもわかってないな」

「はぁ?」

「お前が毎日腰につけているものはなんだ」

「あ、そうかこのウエストポーチに入れればいいのか」と俺はようやく気が付いた。

「どうせ気づいてないだろうからついでに言っておくが、そのウエストポーチの中身はスマホで確認できるから拾った石がクロム鉱石かどうか確認できる」

「そうなんですね」

「やっぱり、気づいてなかったな。どれだけ間抜なんだ。仲間じゃなかったら500ゴールドはもらってたな」

「拾った石はクロム鉱石以外も渡すんだぞ」

「わかりました」と言って、再び裏山に戻った。

そうか、ウエストポーチに入れれば重い思いをしなくて済むのかと思った。まてよ、石臼を運んだ時もウエストポーチに入れれば簡単に運べたじゃないか。ユウカのヤツ知ってて黙って見てやがったな。あいつ性格悪いなと考えていた。

半日かけてようやくクロム鉱石を5kg集めることができた。

「持ってきました」とユウカにいった。

「ご苦労。それじゃあクロム鉱石はそこの窯にいれてくれ。残りの石は部屋の端の作業台の上に置いてくれ。後で、手伝ってほしいことがあるから、しばらく休憩しといてくれ。」そう言われて俺は素材工房のベンチで休息をとることにした。

ベンチでうとうとしているとユウカにたたき起こされた。

「いつまで寝てる。仕事だ。起きろ」

「はぁ」

「窯に残っている小石と砂を袋にいれて隣のガーデニングの道具小屋までもっていってくれ」

「また、力仕事ですか」

「お前それしかできないだろ。黙って言われたことをしてろ」

「わかりましたよ」そう言って、しぶしぶ窯から小石と砂を取り出そうとした。

だがとても熱かったのでスコップや手袋をして作業することにした。いくつかの袋に窯の中にある小石と砂をすべて入れた。その袋をウエストポーチにいれて、隣のガーデニングの道具小屋まで運んだ。道具小屋の奥まですすみウエストポーチから小石と砂を入れた袋を取り出し壁に沿って並べた。ふと視線を上げると小屋の開いていた窓からガーデニング場がみえた。色とりどりの花やハーブが咲いていてとてもきれいで、どことなくいい匂いも漂ってきていた。

「あー、いやされるなー」と知らず知らずの間にひとりごとを言っていた。しばらく、花やハーブを眺めていた。

素材工房に戻って

「終わりました。もう、帰ってもいいですか」とユウカにいった。

「まだだ。まだクロムのインゴットを作っただけじゃないか。取引所で仕入れた鉄のインゴットとニッケルのインゴットを使ってステンレスのインゴットを作るんだよ。」

「なんで、クロムのインゴットは作ったのに、他のインゴットは買ったんですか。」

「クロムのインゴットは高いんだよ。ここシルバーラビリンスではクロムがたくさん取れるから買うより作った方が早くて安い」

「へー!そうなんですか。ここのラビリンスはシルバーラビリンスっていうんですか」

「驚いたのはそこかよ。そうだよ、銀鉱石だけじゃなく、ところどころ銀色に光る石が多くとれるから、シルバーラビリンスっていうそうだ」

「銀鉱石は見つけたことがありませんが、確かによく銀色の鉱石は落ちてますね」

「それじゃあステンレスのインゴットをつくるぞ」

「なんでステンレスのインゴットをつくるんですか」

「ステンレスはさびにくいから服や小物の金属部分によく使用されているんだ。これがないと金属を使うブランド品が作れないからな。ブランド品を作れば高く売れるだろ、そのためだ」

「金儲けするにも大変ですね」

「いいからさっさと作るぞ」

材料がそろっていたのでステンレスのインゴットを作るのにあまり時間がかからなかった。

「できた。続きは明日にするか。後かたづけをして、今日は終わりだ」

後かたづけをした後ショウは今日の給料として1,000ゴールド受け取った。これだけ働いてたった1,000ゴールドかよ。しかし、石を拾って売るよりよりはましだと思った。